ルールは揺らぐ、それでも戻る場所、35年経っても指は震える——私が株を買うタイミングをどう決めているか【後編】
こんにちは、前田嘉一です。
前編では「お客様の自己責任」という言葉がルールを作る理由になった話を、中編では3分割購入の具体的な手順と「買えてしまったほうが恐怖を覚える価格」という発想をお伝えしました。
この記事では、ルールを作っても揺らぐこと、それでもルールに戻れる理由、
そして35年経った今でも指が震える話をお伝えします。
ルールがあっても揺らぐ——それでもルールを守る理由
穏やかなときに作ったルールは、嵐の中で機能しない
私の「3分割ルール」や「ストップ安手前で発注するルール」は、相場が穏やかなときに作りました。
でも実際にその時が来ると、感情のほうが上回ってしまい、機械的に発注することはできません。
苦労して貯めたお金を、安くなるまで待ち続けた忍耐を生かして、目標株価に届いたから注文を出す
——冷静なときには「暴落時大人買い」と言っていても、実際にその場面になると注文は出せません。
ルールは揺らぐのです。
必ず「もっと下がるのでは」「このまま倒産してしまうのでは」という疑念が湧いてきます。
「やり直しがきかない」という焦り
お金を失うこと。入金力。そこから立ち直ること。
富裕層出身や高収入職の人は、比較的余裕資金を作りやすく、やり直しもしやすい。
でも、倒産しそうな薄給の上場会社に、バブルの時期を利用してやっと潜り込んだ、町工場の街の下町出身で妻子持ちの私には、「失敗したらやり直しがきかない」という思いが先走ってしまいます。
「私には入金力がない」
「余裕資金を投資には絶対に回したくない」
「資産を持つことがお金持ちになる方法だとわかっている、でも失敗するのが怖い」
——この葛藤がいつも頭の中をグルグル回ります。
SNSの推奨銘柄を後追いした結果
その反面、「手っ取り早く」お金持ちになりたいという気持ちもあります。
じっくり待たずに、何も考えずに買ってしまう。
特に最近はSNSの影響が大きい。
「この人やこのグループが言っていることは信ぴょう性がある」と思って買ってしまう。
それで結局は損をします。
こういう人の推奨銘柄をできる限り後追いしてきましたが、長期で見ると散々です。
ビジネス構造を見る目が浅いのです。
こういう人たちは成功したときにしか発言せず、失敗は黙っているものです。
だから参考程度にしなければならない——わかっていても、なかなか難しい。
投資のベテランは推奨銘柄を聞いても「そういう考え方もある」と言って、自分で調べて咀嚼します。
私もこの「咀嚼する材料」を出してくれる投資家さんたちに囲まれていたいと思っています。
自分の失敗や生い立ちは言わず、人の発表する銘柄に難癖をつけてマウントを取る「すご腕投資家」にはなりたくありません。
「意地になる」ことの失敗
もうひとつ、「意地になる」ことも失敗の原因です。
一度に買わず5%ずつ買い下げる。これを3回。
でも意地になって4回、5回と買い下げていくと、資金が足りなくなります。
平均単価を下げることだけに意地になると、反転して元の平均単価に戻すのが大変になります。
結局のところ、相場が穏やかなときに作ったルールを守ることが一番良いという結論になります。
自分が苦しまないようにルールを守る。
「その場の感情」で突っ走って大きな失敗をすることは、自分にはできない——それがわかってくるのです。
35年やっても、指は震える
2025年、湖北工業を追っていた
私は1991年の自社株投資をきっかけに投資家になりました。
35年経った今でも、暴落時の注文は指が震えます。
最近の具体例で言うと、2025年4月のトランプ関税ショックのとき、私は「湖北工業」(コード6524)を追っていました。
さまざまな勉強会で「次の大暴落時に狙っている株」として紹介していたので、ご存じの方もいるかもしれません。
トランプ関税ショック前の3/24に2,200円、関税ショック中の3/31に1,950円、4/4に1,800円、1,754円——合計231万円分を現金で約定しました。
資産額や経験によって一概には言えませんが、リーマンショックのときに買えたのが300〜400万円でしたので、近い金額を買っています。
「怖くなくなった」のではなく「恐怖に慣れた」
このときはルールがあったから、トランプ関税ショックでも「怖いまま動ける」ようになっていました。
経験を積み、生き残ってきたことで「怖くなくなった」のではなく、「恐怖に慣れた」のです。
震えながらも、まだ根拠がわかってルール通りできる恐怖です。
もし2番底が来て、半値になったら
でも、ここからトランプショックの2番底が来て、湖北工業の株が半値の時価100万円まで下がったとき、どうするか。
マイナス131万円の現実と、ニュース・新聞・SNSがすべて悲観で「すぐに売れ」と叫んでいる状況になります。
それに立ち向かわなければなりません。
大暴落の原因はトランプ関税を実行するか否か——理由もわかっています。
リーマンショックも同じ構図でした。
でも2025年春のトランプ関税のときは、結局この2番底は来ませんでした。
相場に立ち向かえるかどうか。
信じた株が半値になってもどうするか決めているか
——湖北工業は買い増しと決めていました。
ビジネス構造と事業を集中させ、自己資本もあり財務も盤石だからです。
でも、その2番底の現実が来たら、おそらく震えが止まらないでしょう。
「頭が真っ白になる」
「もっと下がるのでは」
「分析が間違っているのでは」
「倒産してしまうのでは」。
でも株価だけは気になって気になって仕方ない。
そのうち、リーマンショックで経験したように、「買えたら恐怖を覚える価格」で購入していく。
買えても嬉しくない価格——ここが最高の底値です。
リーマンショックで東京エレクトロン・TDK・村田製作所で経験したのと同じです。
ここまでわかっていても、すぐには買い進められないでしょう。
自分が弱いのがわかっているからです。
リーマンショックのときの自分に、何を伝えられるか
もしリーマンショックのときの自分に、今の自分は何を伝えられるだろうか。
おそらく「大丈夫、震えながらでも買える」——それだけです。
私は技術も精神力も増えていません。
ただ、震えながら買った経験の回数だけが増えているのです。

締め:ルールは「弱い自分を守るための仕組み」
私はリーマンショック、東日本大震災ショック、コロナショック、トランプ関税ショックをはじめ、さまざまな大暴落を乗り越えてきました。
その際にルールや事前の決め事を用意していますが、いつも恐怖や葛藤と戦ってきています。
投資歴35年。
それでもルールを使い続けています。
私は強くありません。
弱いことは散々わかっています。
それでも生き残れたのは、感情を排除する方法ではなく、恐怖と共存しながら投資をすることにしたからです。
そのために、いかにルールを維持し、感情が入り込む余地を少しでも減らせるかに努力しています。
私は弱い。
恐怖と共存しようとしています。
それでも指が震えるのは今も変わりません。
それでも、震えながら注文を出すたびに、少しずつ自分の判断を信じられるようになってきているのがわかります。
あなたに問います。
今、感情で買っていますか。
それとも、ルールで買っていますか。


まとめ:3本を通じてお伝えしたかったこと
前編・中編・後編を通じて、株を買うタイミングをどう決めているかをお伝えしました。
- 2002年の失敗から「お客様の自己責任」という言葉に行き着いた
- TDKの3分割購入という具体的なルールを作った
- リーマンショックで「買えてしまったほうが怖い価格」が真の底値だと知った
- ルールは揺らぐ、それでも戻ってくる場所として機能する
- 35年経っても指は震える、でも震えながら動けるようになった
ルールは、強い自分になるためのものではありません。
弱い自分のままで生き残るための仕組みです。


ルールは揺らぐ、株を買うタイミングをどう決めているかについて、ブログのご感想などがあればお待ちしています。
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