3分割購入と、買えてしまったほうが怖い価格という発想——私が株を買うタイミングをどう決めているか【中編】
こんにちは、前田嘉一です。
前編では、2002〜2004年に情報だけで株を買って失敗した経験と、「お客様の自己責任」という言葉が、なぜルールを作る理由になったのかをお伝えしました。
この記事では、実際に作った「3分割購入」というルールの中身と、リーマンショックで体験した「買えてしまったほうが恐怖を覚える価格」という発想についてお伝えします。
3分割購入というルールの中身
TDKを例に——具体的な数字で3分割購入を説明します
3分割購入について、コード6762・TDKを例に具体的に説明します。
現在、TDKには時価約9,000万円を投資しています。
買値の19倍になり、ポートフォリオ第2位です。
まず2年間のチャートを見て、一番の底値が1,500円あたりにあるとします。
この1,500円を最初の目標に置きます。
現在の半値より下ですが、半分になるときはやってきます。
逆に言えば、私のTDKも半値より下になる可能性があると思っています。
イライラして、そして「忘れる」
50%引きになるのを待つ。
最初はイライラします。
でもそのうち忘れてしまいます。
そして、いざその時が来ても、「安いと思って買えるかどうか」です。
私はここが苦手です。
必ず「高かったときのこと」を思い出してしまいます。
これ以上下がって、倒産してしまうのではないかと想像してしまう。
この恐怖を乗り越えられません。
ここまで下がるのを待った苦労を、いつも忘れてしまいます。
本当に葛藤の繰り返しです。
○○ショックという報道に流されて、さらに下がることを考えてしまう。
何もしなくても現状維持が一番楽なのです。
人間はあれこれ理由をつけて何もしません。
楽だからです。
でも、それでは資産は持てません。
お金持ちにはなれません。
1/3を入れる——「バットを振らなくては当たらない」
ここでルール化して、資金の1/3を1,500円で注文します。
私も怖いです。
注文を押したあと、いつもこう考えます。
「バットを振らなくては当たらない」と。
相場では「自己責任」と言われます。
それを深く考えてしまうと、誰も背中を押してくれません。
いつもこの葛藤の繰り返しです。
5%ずつ、3分割購入で買う
次の目標は、1,500円の5%引きの1,425円です。
ここでも同じ1/3の資金で買います。
これで平均単価が1,463円になりました。
次は同じく5%引きの1,389円で、最後の1/3を買います。
平均単価1,438円でTDK株を買えたことになります。
この株が1,438円から10%減の1,294円になれば損切りします。
そして保有は原則永久です。
注文方法はすべて指値で、ルール通りの価格をあらかじめ設定しておきます。
「別に欲しくなかった」という言葉
それで買っていく。
買えても、出てくる言葉は「別に欲しくなかった」「何で買ってしまったのだろう」です。
逆に「資産を安く買えてラッキー」という言葉は、一言も出ません。
人と逆のことに、苦労して貯めた大金を賭ける。
失敗したら家族に迷惑がかかる。
すべて自己責任と言われて、責任を取らなければならない。
だから保身的になる。
いざというとき何もできないことが、わかれば分かるほど、株を買うという行為に、実際は誰も背中を押してくれないことに気づきます。
だからできるだけルール化する。
それが余計なことを考えずに、心を守るということなのです。
ここで大事なのは「5%引き」という数字そのものではありません。
「ルール化する」「底値まで待つ」「一度で買わない」——この3つです。
「買えてしまったほうが恐怖を覚える価格」という発想
2008年10〜11月、リーマンショック後の記憶
私にとってリーマンショックの2008年10〜11月は、忘れられない記憶です。
「東京エレクトロン」「TDK」「村田製作所」を、前日比でストップ安手前の400円以下で、一単元ずつ注文を出していたあの日。
3銘柄とも1株3,000〜4,000円くらいでしたので、ストップ安は500円。
その手前、前日比400円以下の金額で注文を出す。
通常なら前日比10%以下なので、まず約定しません。
「買えない、欲しくもないので別に構わない」——そういう前提で出す注文です。
ネット証券以前——証券会社の営業マンとの「数合わせ」
実はこの方法は、2002〜2005年ごろ、ネット証券が台頭する前、証券会社の営業マンとの電話でやっていました。
向こうは推奨株の注文が取れて、夕方に「買えたかどうか」の報告の電話ができる。
この時期は不況で株で損している人も多く、営業マンは顧客に電話をかけにくい時代でした。
私の発注は、困ったときの「数合わせ」だったのです。
私にとっては、窓際で話し相手もいなかったので暇つぶしになる。
要らない株を買わずに済んで、情報も得られる。
一石三鳥でした。
ネット証券の手数料が下がっていくにつれ、この習慣もパソコンでの分析に置き換わっていきました。
「半値」になった東京エレクトロン——「まさか」の値段
この2008年10〜11月は、私が9月のリーマンショックからの急落で止めていた売買を再開していたころです。
東京エレクトロンは普段6,000〜8,000円と記憶していたのが、改めて見ると半値の3,000〜4,000円でした。
2番底でした。
安くなるのを待って少しずつ買っていたので、嬉しさより「まさか」という感覚でした。
東京エレクトロンまで潰れてしまうかもしれないと思いました。
相場は総悲観でした。
「次にリーマン・ブラザーズのように破綻するのはどこか」「数社あるだろう」「底も見えない」——TV、新聞、証券会社、ネットニュース、SNSすべてがこういう報道でした。
自分の持ち株が下がっていくのが心配で、夜も眠れずNY市場やSNSを見ていました。
初めて出会う大暴落で、何のシミュレーションもしていませんでした。
すべてが真っ暗で、怖くて動けない。
動かないことが唯一の生存方法でした。
バフェットの言葉に「背中を押してもらいたかった」
それでも、東京エレクトロン・TDK・村田製作所の「半値」は諦めたくなかった。
以前から調べて、ビジネス構造・財務・将来性はばっちりでした。
自信もあったし、まわりの評価も高い銘柄でした。
「欲しい、でも潰れるのでは」という葛藤がグルグル回っていました。
バフェットの「潮が引いたとき、誰が裸で泳いでいたかわかる」「潮はいつか満ちる」という言葉を頼りにしました。
というより、何か別の解釈でもいいから、背中を押してくれるものが欲しかったのです。
ストップ安手前で注文——そして「買えてしまった」
恐々ですが、以前証券会社の営業マンとやっていたのと同じように、ストップ安手前の金額で注文を出していきました。
真っ暗な中で、恐々と動き出すそぶりを見せたのです。
昔なら買えない値段なので「買えなくて終わり」「動いていない」ということで安心できました。
まわりが売っているところへ逆のことをしているのもわかっていました。
怖かったですが、心の奥に「どうせ買えない」という安心感がありました。
でも、この時には買えてしまうのです。
今まで絶対に買えなかった値段で、買えてしまう。
最後に残っていた安心感が、絶望に変わりました。
本当に世界中の金融が危ない。
株価はもっと下がる、すべてが潰れてしまうのではないか——見る情報のすべてがそういう状態でした。
私の投資家人生も終わりだと覚悟しました。
でも、持ち株を全部売却して損切る勇気もありませんでした。
それも怖いし、本当に終わらせていいのかと悩む。
何もできない。
だからルールが必要だと、身をもって知りました。
7回の約定——「真の底値」とは何か
結局、この2008年10〜11月、ストップ安手前の発注で、3銘柄合計7回約定しました。
合計300〜400万円の買い物でした。
すべて「買えてしまった株」です。
買ってしまって、「明日もっと下がったらどうしよう」と思った株。
「買えてしまった恐怖」を覚えて、「明日もストップ安手前かな」と不安な夜を過ごす——このときこそが、真の「底値」でした。
「逆張り」とは、冷静な判断でできるものではありません。
恐怖に耐えながら、弱い自分の感情を押し殺して、それでも動くこと。
そんなことは最初から無理だとわかっているから、私は「ルール化」しているのです。


まとめ:ルールは「5%」のためではない
3分割購入というルールの本質は、5%という数字にあるのではありません。
底値まで待つこと。
一度で全部買わないこと。
そして「買えてしまったほうが恐怖を覚える価格」で注文を出すこと——この3つです。
恐怖は、相場が本当に悲観に振れているときにだけ現れます。
だから「買えてしまった恐怖」こそが、逆張りの本質を自動的に教えてくれるサインなのです。
次の記事では、こうしてルールを作っても揺らぐこと、それでもルールに戻れる理由、そして35年経っても指が震える今の話をお伝えします。→後編【こちら】




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