3つの数字、株を買う前に確認する【中編】——ROE・利益剰余金・海外売上比率が教えてくれたこと
こんにちは、前田嘉一です。
前編では、2005年ごろの窓際族時代に会社のパソコンで四季報データをエクセルに落とし、3,000社の財務データを並べ替え始めた理由をお伝えしました。
「勤務先と真逆の会社を探す」という動機から始まったこの作業が、私の投資の土台になりました。
この記事では、その中で辿り着いた3つの数字
——ROE・利益剰余金・海外売上比率について、実際に使ったときに何を感じたかを正直にお伝えします。
3つの数字①ROE——「この会社は本当に儲かっているか」
一番注目した指標
2005年から調べ始めて、私が最初に注目したのが「ROE(自己資本利益率)」です。
株主から集めたお金を、どれだけ効率よく増やしているかを示す指標です。
私の言葉で言えば「この会社は本当に儲ける気があるか」を測る数字です。
エクセルでROEを降順に並べ替えたとき、毎回上位に同じ会社が繰り返し現れました。
「キーエンス」「TDK」「任天堂」「東京エレクトロン」——。
何年か過去を遡っても、高いROEが続く会社には「儲ける文化」があることがわかりました。
キーエンスへの憧れと悔しさ
特にキーエンスのROEはずば抜けていました。
ビジネス構造を調べると、工場ごとに営業マンが聞き取りに行き、自社製品のセンサーを組み合わせて提案するどぶ板営業のスタイルでした。
キーエンスの営業スタイルは、私が20代に必死でやっていたどぶ板営業と同じでした。
同じ手法を使って、なぜあの会社は伸び、私の会社は沈んでいったのか。
その答えが、ROEという数字に凝縮されていました。
この会社に就職すればよかったと、強く憧れました。
勤務先のROEは「N/A」だった
ちなみに勤務先のROEは「N/A」——判定不能でした。
通常、純利益が赤字ならROEはマイナスになります。
でもそれよりひどい債務超過になると「N/A」になります。純利益がマイナス、自己資本もマイナス。マイナス÷マイナスはプラスになってしまうため、計算式が成り立たない。
「N/A」は退場通告です。
勤務先を含め数社だけがこの状態でした。
「やっぱりそうか」という気持ちと、「まだ下もいる」という奇妙な安心感が同時にありました。
ROEが「N/A」とわかった瞬間、単に「赤字だ」という以上のことを悟りました。
数学的に存在してはいけない状態——資本主義のルールの中で「無価値」と判定されているのです。
こんな会社の窓際族として勤務している自分。
その絶望感がありました。
だからこそ、ROEという冷徹な数字とビジネス構造を調べることに、すごくこだわるようになりました。
3つの数字②利益剰余金——「この会社は潰れないか」
勤務先のシニア社員が口にしていた言葉
私の勤務先は、高速道路や橋梁が完成・発達すると衰退していく企業でした。
インフラが発達するまでは儲かっていたので、かつては資産や利益剰余金を積み上げていました。
だから赤字になっても資産で食いつなげていました。
シニア社員がいつも口にしていた言葉があります。
「俺の定年まではつぶれない」。
でもその資産も買いたたかれていきました。
その能天気さへの怒りもあって、32歳でうつ病になったのかもしれません。
「1年間売上ゼロでも大丈夫な会社」を探した
だから私が調べるとき、利益剰余金に特に注力しました。
もっと言えば「利益剰余金+総資産が潤沢にある会社」「1年間売上がゼロでも構わない実力のある会社」の株を買おうと考えました。
具体的に思い浮かんだのが「東京エレクトロン」です。
1997年から3年間、私はこの会社の営業担当をしていました。
そのとき担当者から直接聞いた言葉があります。
「1年間製品が売れなくても大丈夫だ。調子のいいときに内部留保しておく」と。
半導体サイクルという概念を、この会社との関係で初めて実感しました。
リーマンショックで「利益剰余金」が判断の決め手になった
2008年のリーマンショックで、東京エレクトロンの株価が1/2から1/3まで下がりました。
TV・新聞・SNSはすべて「売れ」と悲観的でした。
でも私はバフェットの「潮が引いたとき、誰が裸で泳いでいたかわかる」という言葉だけを頼りに、「いずれ潮が満ちてくる」と判断しました。
バフェットの権威にすがって恐怖を鎮めたいという必死さもありました。
そして決め手になったのが利益剰余金のデータでした。
「これだけ内部留保があれば潰れない」と判断できたのです。
株式市場から退場勧告を出されていた私の勤務先でさえ、倒産せずに普通に営業できていました。
東京エレクトロンなら「潰れないからただ買うだけ」——その確信が、恐怖の中で注文ボタンを押させてくれました。
それでも心の底には「もし今、東京エレクトロンを買わずに、後で株価が戻ったら自分の人生を後悔してしまう」という投資を超えた「生存への執着」がありました。
3つの数字③海外売上比率——「この会社は日本の不況に縛られていないか」
勤務先は国内販売オンリーだった
勤務先は国内販売オンリー。日本の景気に完全に連動していました。
日本が不況なら不況になる。海外に出ていく余裕はない。
すべてがジリ貧でした。
現状維持が破滅への道であるという強い危機感がありました。
2005年、「これが出口だ」と感じた瞬間
調べ始めた2005年は「中国株」がキーワードの時代でした。
ブラジル・ロシアなどの新興国が成長し、日本は不況で世界から取り残されていた感覚がありました。
日本国内だけで商売をしている会社は、日本の不況から逃げられない。
そう感じて、海外売上比率が高い会社一覧を見たとき「これが出口だ」と思いました。
同じ上場会社なのに、海外売上比率が高いTDKや東京エレクトロンだけが劇的に成長している。
「なぜ自分たちの会社はそうでないのか」という強い対比と不満がありました。
儲かっている会社はだいたい海外進出していました。
市場の成長性が、個人の努力や会社の努力を上回るという洞察がここで生まれました。
「属している市場」が個人の運命を決める
自分のキャリアや会社の命運が、「属している市場の成長性」に大きく左右されることを理解しました。
国内市場が縮小・成熟する中で、成長市場(海外)にいないことは、努力しても報われないという諦めに近い感覚でした。
冷徹な海外売上比率という数字は、複雑な要因をシンプルに教えてくれました。
「海外売上比率=成長の鍵」というシンプルかつ強力な法則を、自分で見抜くことができた瞬間でした。
20年後の結末
勤務先の海外売上比率はゼロ。
TDKも東京エレクトロンも、売上の6割が海外でした。
この差が20年後に、「消滅した勤務先」と「TDK株は19倍・東京エレクトロン株は39倍になった会社」(2026年6月現在)という結末に分かれました。


まとめ:3つの数字が映し出したもの
ROEは「この会社は儲ける意志があるか」。
利益剰余金は「この会社は潰れない体力があるか」。
海外売上比率は「この会社は日本の不況に縛られていないか」。
この3つは、投資の教科書から学んだものではありません。
勤務先の財務状況と比べながら、「なぜあの会社は伸び、うちの会社は沈むのか」という怒りと悔しさを燃料にして見つけたものです。
次の記事では、この3つを実際にどう組み合わせて使っていたか、スクリーニングの実際と、3つの数字が最終的に教えてくれたことをお伝えします。→ 後編【こちら】


3つの数字(ROE・利益剰余金・海外売上比率)について、そしてブログのご感想などがあればお待ちしています。
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