株を買う前に確認する3つの数字【前編】——窓際族が「勤務先と真逆の会社」を探した理由
こんにちは、前田嘉一です。
2005年ごろ、私は会社のデスクで毎日エクセルを開いていました。
仕事ではありません。
会社のパソコンで四季報CD-ROMのデータをエクセルに貼り付け、3,000社の財務データを昇順・降順に並べ替えていました。
隣の同僚は私が何をしているか知りません。上司も知りません。
でも、その作業が後に私の人生を変えました。
窓際族の昼下がり——「仕事のふり」で3,000社を分析していた
パソコン担当という偽装
当時の窓際族での仕事は「パソコン担当」でした。
社内LANの構築で、社員1人1台にデスクトップパソコンを割り当てる仕事です。
業者と会社をつなぐだけで、「○日に納入にいくのでよろしく」という紙を配って終わり。
でも窓際族の私でも、早くからパソコンが配給されていました。
上司もまわりもパソコンに詳しくないので、こちらが上に立てました。
社内LANの試し作業をしている感じを出せば、バレても解雇されにくい。
そして仕事をしているふりもしやすかった。
数字を眺めているとき、心が落ち着いた
3,000社の財務データを昇順・降順に並べ替える作業。
このデータ処理に没頭して、数字を眺めているとき、分析している会社の未来を想像しているとき
——このときが、心が落ち着いて未来への希望が出る感覚がありました。
会社では誰も話しかけてくれない。
仕事もない。
でもエクセルの画面の中では、私は3,000社の「優劣」を判断できる立場にいました。
なぜこの3つの数字に辿り着いたのか
「金持ち父さん貧乏父さん」が与えた「ものさし」
2001年にうつ病の療養中に「金持ち父さん貧乏父さん」を読みました。
この本が教えてくれたのはシンプルな考え方でした。
「資産」は自分のポケットにお金を入れてくれるもの。
「負債」はポケットからお金を奪っていくもの。
この違いを知ったことで、会社や人間をすべてこの「資産と負債」で判断できる「ものさし(スカウター)」が生まれました。
最初は紙の四季報で調べていましたが、本が重くて持ち運べない。
そして何より、勤務中に取り出して読むことができない。
データをエクセルで並べ替えるのが最善でした。
勤務先を「ベンチマーク」にした
勤務先も上場企業でした。
だから判断基準にするには最適でした。
最初は指標の意味もよくわからず、「勤務先より上か下か」だけが判断基準でした。
そして勤務先の数字を確認したとき、ショックを受けました。
自己資本比率がマイナス、つまり債務超過でした。
3,000社の中でも数社しかない水準でした。
夕刊紙に「倒産確率の高い企業」と書かれていた理由が、数字として目の前に突きつけられた瞬間でした。
予想はしていました。
でも3,000社を並べて数字で見せられると、さすがにショックでした。
転職を考えましたが、当時は不況で就職先もなく、うつ病から回復したばかりで踏み切れませんでした。
「窓際族で株式投資に負けられない」という覚悟が、ここでさらに固まりました。
「すごい夢」が「偽物の成功」かもしれないという恐怖
上場企業への就職は、子供のころからの夢だった
東大阪の町工場街で育った私にとって、上場企業のサラリーマンになることは「すごい夢」でした。
町工場の街では成功者の象徴でした。
就職時にうまく時流をつかみ、ランクは底辺でしたが、やっと上場企業に潜り込めました。
この嬉しさは格別でした。
薄給でしたが天引き貯金をうまく使い、入社10年で1,000万円の投資資金と500万円の生活防衛資金を作れました。
でも、20代の猛烈な仕事ぶりがたたり、一人で会社を変えようとして32歳でうつ病になった。
その後に気づいてしまいました。
「すごい夢」の実現が、「偽物の成功」だったかもしれないと。
努力や忠誠心が「数字という事実」の前では無意味だった
自分の努力や忠誠心が、冷たい数字の前では無意味でした。
この現実を知ったとき、理不尽さへの怒りと悲しみのすべてがありました。
四季報データは、勤務先がなぜ倒産確率の高い企業なのかを知るのに最適でした。
私が憧れていた上場企業という括りの中にある「勝ち組・負け組」の会社、そしてその特徴を知るために夢中になりました。
そしてもう一方では、「会社という鏡」を通して「自分自身」が「勝ち組」か「負け組」かを判断するためでもありました。
「冷徹な数字」が最も温かい救いだった
誰も助けてくれない孤独の中で
このころの私は、うつ病から復帰したばかりで周囲に理解者がいませんでした。
「誰も助けてくれない」という孤独の中にいました。
そんな中で、四季報データの「数字」が唯一の頼れる仲間でした。
「数字は嘘をつかない」と。
「窓際族」という「死に体」の時間を、「自分の人生を再構築する時間」として捉え直しました。
「絶望を希望に変える」強さの源が、勤務先と「真逆の数字の会社」を自分で探しあてることでした。
数字は私を否定も肯定もしなかった
上司は私を否定しました。
同僚も私を無視しました。
でも数字だけは、私が何者であっても同じ答えを返してくれました。
ROEが20%なら20%、N/Aならそれが事実。
それだけでした。
あの頃の私には、それが一番公平でした。
この感情を排した冷徹な数字が、当時の私にとって「最も温かい救い」でした。
「自律」への渇望が、株式投資の土台になった
うつ病の原因が「会社を変えようとした失敗」だとわかっていました。
だから、もう二度と組織の中で自分を犠牲にして会社のために戦うことはしたくありませんでした。
そこに、株式投資という「個人の判断で自分の資産を増やせる」唯一の手段が見つかりました。
会社に依存しない、自分自身の力で人生を切り開く「自律」への渇望でした。
でも、株式投資も最初はうまくいきませんでした。
「もう辞められない」という思いもありました。
だからこそ、ゼロから「数字という知識」を蓄えることが重要だと考えました。
この冷徹な数字という武器が、うつ病という破滅から自分を救い出し、現在の株式投資家としての自分を再構築していくことになるのです。


まとめ:3つの数字を探し始めた、本当の理由
ROE・利益剰余金・海外売上比率という3つの数字に辿り着いたのは、投資の教科書を読んだからではありません。
「勤務先がなぜダメなのか」を冷静に知りたかったから。
「勤務先と真逆の会社とはどんな会社か」を自分で定義したかったから。
そして孤独の中で、数字だけが公平に自分と向き合ってくれる仲間だったから
——この3つの理由からです。
次の記事では、株を買う前の3つの数字について、それぞれの意味と、実際に使ったときに何を感じたかをお伝えします。→ 中編【こちら】



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コメント
投資のテクニック以前に、どん底の暗闇の中で、冷たい数字に一筋の希望を見出し、それを相棒にして運命を切り開いたというところに感動しました。人間としての強さと、そこから生まれた独自の投資哲学の凄さは本物ですね。これからも楽しみにしています。